身元保証人とは?就職・賃貸・介護施設・在留資格で異なる意味を解説

高齢者が家族と共に賃貸契約書に署名する場面 保証人の基礎知識

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「身元保証人」とは、どのような人を指すのでしょうか。

実は「身元保証人」という言葉には、法律上の統一された定義があるわけではありません。

就職、賃貸住宅、病院・介護施設、外国人の在留資格手続きなど、使われる場面によって意味や法的責任が大きく異なります。

例えば、就職時の身元保証には「身元保証ニ関スル法律」が関係します。一方、賃貸住宅では民法上の保証契約として扱われることがあり、病院や介護施設では身元保証人がいないことだけを理由に利用を拒否できるかについて、厚生労働省が一定の考え方を示しています。

また、外国人の在留資格手続きで提出する「身元保証書」は、民法上の保証契約とは性質が異なります。

この記事では、「身元保証人」という言葉が使われる代表的な4つの場面について、それぞれの意味や責任、注意点をわかりやすく解説します。

  1. 身元保証人とは?一つの法律だけでは説明できない
  2. 1.就職の身元保証人とは?
    1. 就職の身元保証には期間がある
    2. 会社には身元保証人への通知義務がある
    3. 身元保証人には解除権がある
    4. 身元保証人の責任額が必ず全額になるとは限らない
    5. 2020年の民法改正で「極度額」が重要になった
  3. 2.賃貸住宅の身元保証人とは?
    1. 賃貸の連帯保証人には責任の上限がある
    2. 賃貸の連帯保証人は「まず借主に請求して」と言えない
    3. 保証会社を利用しても連帯保証人が必要になる場合がある
  4. 3.病院・介護施設の身元保証人とは?
    1. 病院は身元保証人がいないことだけを理由に入院を拒否できるのか?
    2. 介護保険施設についても一定の考え方が示されている
    3. 身元保証書に「金銭保証」が含まれている場合は注意
  5. 4.在留資格の身元保証人とは?
    1. 在留資格の身元保証人に法的責任はないの?
  6. 身元保証人が見つからない場合はどうする?
  7. 身元保証人になる前に確認すべき5つのポイント
    1. 1.何を保証するのか
    2. 2.保証する金額に上限があるか
    3. 3.保証期間はいつまでか
    4. 4.連帯保証なのか通常の保証なのか
    5. 5.自分で負担できる責任なのか
  8. よくある質問
    1. 身元保証人と連帯保証人は同じですか?
    2. 身元保証人になると借金を肩代わりすることになりますか?
    3. 就職の身元保証人は何年間責任を負いますか?
    4. 賃貸住宅の身元保証人に期間制限はありますか?
    5. 病院は身元保証人がいないと入院できませんか?
    6. 介護施設は身元保証人がいなくても利用できますか?
    7. 在留資格の身元保証人になると、お金を支払う義務がありますか?
    8. 身元保証人を頼まれたら断ることはできますか?
  9. 参考情報
    1. 免責事項

身元保証人とは?一つの法律だけでは説明できない

「身元保証人」という言葉だけでは、どのような責任を負うのか判断できません。

重要なのは、何のために身元保証人になるのかです。

代表的には、次の4つのケースがあります。

場面 身元保証人の主な意味・役割
就職 従業員の行為によって会社が損害を受けた場合の賠償を保証するケース
賃貸住宅 家賃などの債務について保証するケース。契約内容によって連帯保証人となることもある
病院・介護施設 緊急連絡先、身元引受け、費用の保証など、施設によって役割が異なる
在留資格 外国人の滞在費・帰国旅費・法令遵守などについて道義的責任を負うもの

同じ「身元保証人」という名称でも、法的責任の有無や責任の範囲はまったく同じではありません。

そのため、身元保証人になる場合は、名称だけではなく、実際に提出する書類や契約書の内容を確認することが重要です。

1.就職の身元保証人とは?

会社に就職する際、「身元保証書」への署名を求められることがあります。

この身元保証書が、従業員の行為によって会社に生じた損害を賠償することを約束する内容であれば、「身元保証ニ関スル法律」(以下、身元保証法)の対象となる場合があります。

重要なのは、書類の名称ではなく、実際にどのような内容の契約をしているかです。単に家族の連絡先を登録するだけの書類であれば、通常、身元保証法上の身元保証契約とは異なります。

就職の身元保証には期間がある

身元保証法では、身元保証契約の期間についてルールが定められています。期間を定めなかった場合、原則として契約期間は3年間です。一方、期間を定めた場合でも、最長5年とされています。

つまり、期間を定めない場合は原則3年、期間を定める場合は最長5年となります。なお、商工業見習者については例外的に5年間とされています。契約を更新することは可能ですが、更新後の期間についても最長5年という制限があります。

会社には身元保証人への通知義務がある

身元保証法では、会社側にも一定の義務があります。例えば、従業員に業務上不適任または不誠実な事跡があり、そのために身元保証人の責任が生じるおそれがあることを会社が知った場合などには、保証人に通知する必要があります。

また、従業員の任務や勤務地の変更によって、保証人の責任が加重されたり、保証人による監督が困難になったりする場合にも、通知が必要となります。

身元保証人には解除権がある

会社から上記のような通知を受けた場合、身元保証人は契約を将来に向かって解除することができます。また、保証人自身がその事実を知った場合にも、一定の条件のもとで解除することができます。

ただし、解除したからといって、それ以前に発生していた責任まで自動的に消えるわけではありません。

身元保証人の責任額が必ず全額になるとは限らない

身元保証人が会社に対して損害賠償責任を負う場合でも、必ず損害額の全額を負担するとは限りません。身元保証法では、裁判所が、会社側の過失の有無や身元保証人が保証をするに至った事情などを考慮して、責任の有無・金額を調整できるとされています。

2020年の民法改正で「極度額」が重要になった

2020年4月1日から施行された民法改正によって、個人が根保証人になる契約について、極度額(保証人が負担する責任の上限額)を定める必要があります。就職時の身元保証契約についても、契約内容によっては個人根保証契約に該当すると考えられています。

そのため、2020年4月1日以降に締結された身元保証契約については、極度額が定められているかを確認することが重要です。極度額の定めがない個人根保証契約は、民法465条の2により効力を生じません。ただし、実際の契約が個人根保証契約に該当するかどうかは、契約内容を確認する必要があります。

身元保証書に「連帯して責任を負う」という文言がある場合は、責任の重さがさらに変わります。この論点については身元保証人の「連帯して」責任とは?範囲と連帯保証人との違いを解説で詳しく解説しています。また、身元保証人を2人求められた場合の考え方は身元保証人は2人必要?意味・役割・法律上の責任をわかりやすく解説をご覧ください。

2.賃貸住宅の身元保証人とは?

賃貸の連帯保証人には責任の上限がある

個人が賃貸借契約について継続的に発生する家賃などを保証する場合、「個人根保証契約」に該当することがあります。この場合、民法465条の2により、極度額を定める必要があります。

極度額とは、簡単にいうと「保証人が負う可能性のある責任の上限額」です。2020年4月1日以降に締結された個人根保証契約では、極度額を定めなければ契約の効力が生じません。

したがって、賃貸住宅の連帯保証人になる場合は、極度額はいくらなのか、家賃以外に何を保証するのか、原状回復費用なども対象になるのか、契約期間はいつまでなのか、などを確認することが重要です。

賃貸の連帯保証人は「まず借主に請求して」と言えない

通常の保証人には、債権者から請求された際に「まず主たる債務者に請求してください」と主張できる「催告の抗弁」があります。また、主たる債務者に弁済する資力があり、かつ執行が容易であることを証明した場合には、まず主たる債務者の財産について執行するよう求める「検索の抗弁」もあります。

しかし、連帯保証人にはこれらの権利がありません。そのため、賃貸借契約の連帯保証人は、借主が家賃を滞納した場合などに、貸主から直接請求を受ける可能性があります。

保証会社を利用しても連帯保証人が必要になる場合がある

近年の賃貸住宅では、個人の保証人ではなく、家賃債務保証会社を利用するケースも一般的になっています。保証会社は、借主から保証料を受け取り、借主が家賃を滞納した場合などに一定の範囲で貸主へ支払う仕組みを提供します。

ただし、保証会社を利用すれば必ず個人の保証人が不要になるとは限りません。契約内容や審査、貸主・管理会社の判断などによっては、保証会社への加入に加えて、個人の連帯保証人や緊急連絡先を求められる場合があります。また、保証会社が貸主に立替払いをした場合、その金額について借主に請求することがあります。

したがって、「保証会社=保証人が完全に不要になる制度」と考えるのではなく、契約条件を確認することが大切です。

3.病院・介護施設の身元保証人とは?

病院は身元保証人がいないことだけを理由に入院を拒否できるのか?

厚生労働省は、2018年4月27日付の通知において、身元保証人等がいないことのみを理由として、入院を拒否することについて考え方を示しています。医師法19条1項では、正当な事由がない限り、医師は診療を拒むことができないとされています。

厚生労働省は、身元保証人等がいないことのみを理由として入院を拒否することは、この規定に抵触するおそれがあるという考え方を示しています。ただし、これは「どのような条件でも身元保証人なしで入院できる」という意味ではありません。あくまで「身元保証人等がいないことのみ」を理由にする場合についての考え方です。

介護保険施設についても一定の考え方が示されている

介護保険施設についても、厚生労働省は、身元保証人等がいないことのみを理由としてサービス提供を拒否することについて、運営基準との関係から考え方を示しています。介護保険施設では、正当な理由のないサービス提供拒否が禁止されています。

そのため、身元保証人等がいないことだけを理由として利用を拒否することは、「正当な理由」に該当しないとされています。ただし、病院と同様、施設の種類や具体的な状況によって取り扱いが異なるため、利用を希望する施設に確認することが重要です。

身元保証書に「金銭保証」が含まれている場合は注意

病院や介護施設から提出を求められた身元保証書に、「入院費を支払う」「施設利用料を保証する」「本人が支払わない場合は保証人が支払う」などの条項が含まれている場合、単なる緊急連絡先とは意味が大きく異なります。

個人が継続的に発生する債務を保証する契約であれば、個人根保証契約に該当し、極度額の定めが必要となる場合があります。そのため、署名する前に、「自分は単なる連絡先なのか、それとも金銭的な保証責任を負うのか」を確認しましょう。

なお、病院・介護施設で使われる「身元引受人」については身元引受人とは?意味・役割・責任をわかりやすく解説、身元引受人と保証人の違いは身元引受人と保証人の違いをわかりやすく解説で詳しく解説しています。判断能力が低下した方が入所する場合の成年後見人との関係については成年後見人と保証人の違いをわかりやすく解説、老人ホーム入居時に必要な書類全般については老人ホーム入居に必要な書類は?種類別・段階別の手続きガイドもご参照ください。

4.在留資格の身元保証人とは?

在留資格の身元保証人に法的責任はないの?

出入国在留管理庁の説明によれば、在留資格手続きにおける身元保証は法的な強制力を持たないものとされています。ただし、保証事項を履行しなかった場合には、将来の入国・在留申請などにおいて、身元保証人としての適格性を欠くと判断される可能性があります。

そのため、「法的責任がないから何でも署名してよい」という意味ではありません。自分が何を保証するのかを確認したうえで署名することが大切です。なお、永住許可申請など、手続きによって身元保証書の内容が異なる場合があります。

身元保証人が見つからない場合はどうする?

身元保証人が必要と言われたものの、家族や親族、友人などに依頼できないケースもあります。ただし、まず確認したいのは、本当に法律上の保証人が必要なのか、それとも施設や会社などが独自に提出を求めているのかという点です。

例えば、賃貸住宅では保証会社を利用できる場合があり、病院では身元保証人がいない場合の対応について相談できる場合があります。介護施設は施設によって代替方法が異なり、就職では会社に代替手段がないか相談できる場合があります。在留資格では、手続きの内容に応じて必要書類を確認しましょう。

保証人が見つからないからといって、すぐに諦めるのではなく、まず相手方に「保証人がいない場合の代替方法」を確認してみましょう。

身元保証人になる前に確認すべき5つのポイント

1.何を保証するのか

まず確認したいのが、保証する内容です。単なる緊急連絡先なのか、本人の身元引受けなのか、それとも金銭的な債務まで保証するのかによって責任は大きく変わります。

2.保証する金額に上限があるか

金銭的な保証をする場合は、極度額が設定されているかを確認しましょう。特に個人根保証契約では、極度額の定めが重要です。

3.保証期間はいつまでか

就職時の身元保証には身元保証法による期間制限がありますが、賃貸借契約などの民法上の保証契約には同じルールが適用されるわけではありません。契約期間を確認しましょう。

4.連帯保証なのか通常の保証なのか

「保証人」と書かれていても、契約書の内容によっては連帯保証となっている場合があります。連帯保証人になると、催告の抗弁や検索の抗弁を主張できないため、通常の保証人よりも責任が重くなります。就職の身元保証書における「連帯して」の意味については、身元保証人の「連帯して」責任とは?で詳しく解説しています。

5.自分で負担できる責任なのか

最も重要なのは、「もし本人が支払えなくなった場合、自分は対応できるのか」という点です。保証人になることは、単なる名前貸しではありません。契約内容によっては、本人に代わって金銭的な負担をする可能性があります。

よくある質問

身元保証人と連帯保証人は同じですか?

同じではありません。「身元保証人」は、使われる場面によって意味が異なる言葉です。就職時には身元保証法が関係する場合があり、賃貸住宅では契約内容によって民法上の保証人・連帯保証人となる場合があります。そのため、名称ではなく契約書の内容を確認することが重要です。

身元保証人になると借金を肩代わりすることになりますか?

必ずしもそうではありません。身元保証人がどのような責任を負うかは、契約内容や制度によって異なります。金銭的な保証を含む契約であれば、本人が支払わない場合に保証人が支払う責任を負う可能性があります。一方、単なる緊急連絡先や身元引受けとして登録するだけで、金銭的な保証責任を負わないケースもあります。

就職の身元保証人は何年間責任を負いますか?

身元保証法が適用される契約の場合、期間を定めなければ原則3年間です。期間を定める場合でも最長5年とされています。ただし、実際の契約内容によって適用される法律やルールが異なるため、契約書を確認する必要があります。

賃貸住宅の身元保証人に期間制限はありますか?

就職時の身元保証に適用される身元保証法の期間制限が、そのまま賃貸住宅の保証契約に適用されるわけではありません。賃貸住宅では契約内容によって民法上の保証契約となるため、保証期間については契約書を確認する必要があります。また、個人が根保証人になる場合には、極度額の定めが必要となる場合があります。

病院は身元保証人がいないと入院できませんか?

厚生労働省は、身元保証人等がいないことのみを理由として入院を拒否することについて、医師法19条1項との関係で問題となる考え方を示しています。ただし、これは「どのような場合でも身元保証人なしで入院できる」という意味ではありません。病院ごとの事情もあるため、身元保証人がいない場合は、病院の相談窓口などに確認することをおすすめします。

介護施設は身元保証人がいなくても利用できますか?

介護保険施設については、厚生労働省が、身元保証人等がいないことのみを理由としたサービス提供拒否について一定の考え方を示しています。ただし、施設の種類や契約内容によって対応は異なります。身元保証人がいない場合は、入所を希望する施設に代替方法がないか確認しましょう。

在留資格の身元保証人になると、お金を支払う義務がありますか?

出入国在留管理庁の説明によれば、在留資格手続きにおける身元保証は法的な強制力を持たないものとされています。ただし、道義的な責任を負うものとされており、保証事項が履行されない場合は将来の申請に影響する可能性があります。金銭的な取り扱いは手続きの内容によって異なるため、申請先の案内や書類の内容を確認することが重要です。

身元保証人を頼まれたら断ることはできますか?

はい。保証契約は本人の意思に基づいて締結するものなので、身元保証人になることを断ることはできます。特に責任の範囲が分からない場合や、金銭的な保証責任を負う可能性がある場合は、契約内容を確認してから判断しましょう。

参考情報

本記事では、以下の公的資料を参考にしています。

  • 身元保証ニ関スル法律
  • 民法
  • 法務省「2020年4月1日から 保証に関する民法のルールが大きく変わります」
  • 厚生労働省「身元保証人等がいないことのみを理由に入院を拒否することについて」
  • 厚生労働省「介護保険施設等における身元保証人等の取扱いについて」
  • 出入国在留管理庁「出入国審査・在留審査Q&A」
  • 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン

免責事項

本記事は、身元保証人に関する一般的な情報を提供することを目的としています。実際の契約の有効性や保証責任の有無・範囲は、契約書の内容や具体的な事情によって異なる場合があります。個別の法律問題については、弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。

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