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賃貸借契約の保証人を頼まれたとき、保証契約の方式について法律が求めているのは「書面での契約」と「極度額の書面での定め」です。
住民票や印鑑証明書は、貸主・管理会社が入居審査のために実務上求めていることがあるものであり、法律で一律に決まっているわけではありません。
本記事では、法律上の要件と実務で求められることがある書類の違い、契約前に確認しておきたいポイントを整理します。
賃貸の保証人になるときの必要書類とは?法律上の要件と実務上の書類は別物
賃貸の保証人になるとき、多くの人が「何を提出すればよいか」を気にしますが、実は保証人が提出すべき書類の種類を定めた法令の規定は見当たりません。
法律が保証契約について要求しているのは、書類の種類ではなく次の2点です。
- 保証契約が書面(または電磁的記録)でされていること
- 個人が賃貸借の保証人になる場合(連帯保証かどうかを問いません)、その保証が将来発生する家賃など不特定の債務を保証する「個人根保証契約」にあたるときは、極度額(保証人が負う責任の上限額)が書面で定められていること
住民票、印鑑証明書、本人確認書類、収入証明書などは、この2点とは別に、貸主や管理会社、保証会社が入居審査や本人確認のために契約実務として求めているものです。
したがって「必要書類はどこでも同じ」というものではなく、契約先によって求められる書類や運用が異なります。
実際に何を準備すればよいかは、必ず契約先(貸主・管理会社・保証会社)に事前に確認しましょう。
保証契約の方式について、法律が求めていること
1. 保証契約は書面(電磁的記録)でなければ効力を生じない
民法446条2項・3項により、保証契約は書面(または電磁的記録)でされなければ効力を生じません。
口頭だけの約束では、保証契約としての効力が認められない仕組みになっています。
2. 個人が保証人になる場合は極度額の定めが必要(連帯保証かどうかを問わない)
民法465条の2第1項・2項により、一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(根保証契約)であって、保証人が個人であるもの(個人根保証契約)は、極度額を定めなければ効力を生じません。
賃貸借契約の家賃債務のように将来発生する不特定の債務を保証する場合、通常この個人根保証契約にあたります。
この要件は「保証人が個人であること」で決まり、連帯保証かどうかは条文上関係ありません。
単純な保証人であっても、根保証にあたり保証人が個人であれば、極度額の定めがなければ効力を生じません(保証人が法人である場合は対象外です)。
この極度額の定めについても、446条2項・3項が準用されるため、書面(電磁的記録)で定める必要があります(465条の2第3項)。
なお、極度額の定めがないことで効力を生じないのは「保証契約」であり、賃貸借契約そのものが無効になるわけではありません。
この点は混同しないよう注意が必要です。
この極度額のルールは2020年4月1日に施行された改正民法によるもので、適用されるのは施行日以後に締結された保証契約です。
施行日より前に締結された契約には改正前の規定が適用されます。
契約更新時の扱いについては契約の形態によって判断が分かれるため、更新のタイミングで保証契約がどう扱われるかは、貸主・管理会社や専門家に個別に確認することをおすすめします。
実務上よく求められる書類(貸主・管理会社によって異なる)
法律上の要件とは別に、実務では契約先によって次のような書類の提出を求められることがあります。
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 住民票
- 印鑑証明書と実印
- 収入を確認できる書類(源泉徴収票、課税証明書など)
ただし、これらはあくまで貸主・管理会社・保証会社が独自に定めている審査項目であり、法律で一律に義務づけられたものではありません。
求められる書類の種類や組み合わせは契約先によって異なり、これらを揃えれば必ず審査に通るというものでもありません。
契約前に、貸主または管理会社へ必要書類を直接確認することが確実です。
なぜ印鑑証明書・実印を求められることが多いのか
保証人に実印での押印と印鑑証明書の提出を求める慣行の背景には、民事訴訟法228条が関係していると考えられます。
民事訴訟法228条1項は、文書はその成立の真正(本人の意思に基づいて作られたものであること)を証明しなければならないと定めています。
そのうえで同条4項は、私文書について、本人またはその代理人の「署名又は押印」があるときは真正に成立したものと推定すると定めています。
実印と印鑑証明書を組み合わせることで、後日その押印が本人の意思によるものであることを証明しやすくなります。
つまり、実印・印鑑証明書は、将来トラブルになった場合の立証を容易にするための実務上の工夫であり、保証契約を有効に成立させるための法律上の要件ではありません。
実印や印鑑証明書がないからといって、保証契約が当然に無効になるわけではない点は押さえておきましょう。
なお、押印がない場合に保証契約の書面性(民法446条2項)を満たすかどうかは解釈にかかわる問題であり、一律に「押印は不要」と言い切れるものではありません。
民事訴訟法228条4項が「署名又は押印」と定めているのは、訴訟で文書の成立が争われたときの推定に関するルールであって、保証契約が有効に成立するための要件を定めたものではない点に注意が必要です。
実際の契約では、貸主・管理会社の様式に従って署名・押印を求められるのが通常です。
極度額は「書類」ではなく契約書に記載される
極度額は、住民票や印鑑証明書のように独立した書類として発行されるものではありません。
契約書(保証条項)そのものの中に記載されます。
例えば、国土交通省が公表している「賃貸住宅標準契約書」(連帯保証人型)は、法令ではなく使用が任意のひな形ですが、その様式では、契約書冒頭の頭書(6)や末尾の記名押印欄に極度額を記載する欄が設けられ、本文の連帯保証人に関する条項で、連帯保証人の負担がその極度額を限度とする旨を定める構成がとられています。
保証人になる際は、「極度額専用の書類」を探すのではなく、契約書自体の中で極度額がいくらと記載されているかを確認することが重要です。
極度額をいくらに設定するかは契約当事者の定めによるため、契約書に記載された金額を必ず自分の目で確認してください。
保証会社を利用する場合との違い
賃貸借契約では、個人の連帯保証人の代わりに、あるいは個人の連帯保証人に加えて、家賃債務保証業者(いわゆる保証会社)を利用するケースがあります。
家賃債務保証業には、貸金業や宅建業のような免許制の業法はありません。
国土交通省の告示(家賃債務保証業者登録規程)に基づく任意の登録制度があるほか、2025年10月施行の改正住宅セーフティネット法にもとづき、住宅確保要配慮者が利用しやすい業者を国土交通大臣が認定する「認定家賃債務保証業者制度」も設けられています。
いずれも任意の制度で、登録・認定を受けていなくても家賃債務保証業を営むこと自体は可能です。
したがって「登録・認定を受けている保証会社だから安心」と単純に言い切ることはできません。
利用する保証会社がどのような会社かは、契約内容や実績などを踏まえて個別に確認する必要があります。
また、民法465条の2の極度額のルールは「個人」が保証人になる場合に適用される規定です。
保証人が法人(保証会社)である場合はこの規定の対象外ですが、契約によっては保証会社の利用と個人の連帯保証人が併存することもあります。
さらに、保証会社が主債務者に代わって家賃を立て替えた場合に発生する求償権について、個人がその保証人になるケースでは、別途、法人保証会社の求償債務を個人が保証する契約に関する規定(民法465条の5)が問題になることもあります。
保証会社を利用すれば個人保証に関する規律が一切関係なくなる、と単純に考えるのは避け、契約書の記載を具体的に確認することが大切です。
保証人になる前に確認しておきたいことチェックリスト
保証人を引き受けるかどうかを判断する前に、次の点を確認しておくと安心です。
- 極度額はいくらに設定されているか、契約書に明記されているか
- 契約は書面(または電磁的記録)で交わされるか
- どのような書類の提出を求められるか、貸主・管理会社に事前に確認したか
- 印鑑証明書などの発行に必要な書類や手数料は、お住まいの市区町村によって異なるため、事前に窓口やホームページで確認したか
- 保証会社が関わる契約かどうか、その場合に自分の負う責任範囲がどう変わるか
- 契約内容に疑問点がある場合、書面を保管したうえで専門家に相談する準備ができているか
印鑑登録や印鑑証明書の発行は、法律ではなく各市区町村の条例に基づく事務であり、必要な持ち物や手数料は自治体によって異なります。
印鑑証明書の取得方法については、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。
よくある質問
実印と印鑑証明書がなければ保証人にはなれませんか?
民法上、保証契約の効力発生に必要なのは、書面であることと、個人根保証契約にあたる場合は極度額が書面で定められていることです(連帯保証かどうかは問いません)。
実印や印鑑証明書は法律上の成立要件ではありません。
ただし、貸主・管理会社の運用として提出を求められることがあるため、実際に何が必要かは契約先に確認してください。
極度額はどの書類を見ればわかりますか?
極度額は独立した書類として発行されるものではなく、契約書(保証条項)自体の中に記載されます。
契約書の頭書欄や条項、記名押印欄などに記載された金額を確認してください。
保証会社を使えば、個人の連帯保証人は不要になりますか?
契約内容によって異なります。
保証会社の利用のみで完結する契約もあれば、保証会社と個人の連帯保証人が併存する契約もあります。
一律に「不要になる」とは言えないため、契約書で自分がどのような立場になるのかを具体的に確認する必要があります。
保証人になるときに、重要事項の説明を受けられますか?
宅地建物取引業法35条が重要事項の説明を義務づけている相手方は、売買・交換・貸借の当事者や代理を依頼した者であり、保証人を名宛人とする説明義務を定めた規定は見当たりません。
また説明義務を負うのは宅地建物取引業者であって、貸主本人ではありません。
したがって、契約内容は自分から確認する必要があります。
不明な点があれば、契約前に貸主・管理会社へ説明を求めてください。
契約書の文言や極度額の定め方、更新時の扱いなど、個別の契約内容について法的な判断が必要な場合は、まず弁護士など専門家に相談することをおすすめします。
契約書の解釈やご自身の状況に応じた判断には、専門的な知識が必要になる場面が少なくありません。
また、「保証人が見つからない」「保証人について相談できる窓口を探している」という場合には、日本総合支援協会(JTS)のような相談窓口を利用する方法もあります。
ただし、JTSは弁護士ではありません。
弁護士法72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を業として取り扱うことを禁じているため、JTSが法律相談への回答や訴訟の代理を行うことはできません。
契約の有効性の判断や紛争への対応が必要な場合は、弁護士など法律の専門家に相談してください。
本記事は保証人問題を解決するための情報メディアです。記事内で紹介するサービスにはPRを含む場合があります。


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