身元保証人の「連帯して」責任とは?範囲と連帯保証人との違いを解説

採用時に就職契約書にサインする新入社員と企業の採用担当者 就職・身元保証人

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就職時に署名する身元保証書に、「連帯して責任を負う」という一文が入っていることがあります。この一文があるかどうかで、実際に負う責任の重さが大きく変わることは、意外と知られていません。本記事では、身元保証人の「連帯して」責任の意味と範囲、通常の連帯保証人との違いを解説します。なお、身元保証人という言葉は就職・賃貸住宅・介護施設・在留資格など場面によって意味が異なります。基本的な定義から知りたい方は、身元保証人とは?就職・賃貸・介護施設・在留資格で異なる意味を解説もあわせてご覧ください。

就職の身元保証人が負う法的責任(概要)

就職時の身元保証人には、「身元保証ニ関スル法律」(昭和8年法律第42号)が適用されます。この法律により、身元保証人は本人(従業員)の行為によって会社が受けた損害を賠償する責任を負う場合があります。

主なルールは次のとおりです。

  • 保証期間は原則3年間(期間を定める場合でも上限5年間、1条・2条)
  • 会社には、身元保証人の責任が生じるおそれを知ったときの通知義務がある(3条)
  • 身元保証人には、通知を受けたときなどに将来に向かって契約を解除する権利がある(4条)
  • 裁判所は、会社側の監督上の過失の有無なども考慮して、賠償額を調整する(5条)

この基本ルールについては、身元保証人とは?で詳しく解説しています。本記事では、そのうえで見落とされがちな「連帯して」という文言の意味と、2020年の民法改正との関係を中心に解説します。

2020年の民法改正で「極度額」が重要になった

2020年4月1日に施行された民法改正により、個人が根保証人になる契約(個人根保証契約)には、極度額(保証人が負担する責任の上限額)を定めることが必須となりました(民法465条の2)。この規定が適用されるのは、次の3つの条件をすべて満たす場合です。

  • 一定の範囲に属する不特定の債務を保証する「根保証契約」であること
  • 保証人が個人であること(法人ではない)
  • 2020年4月1日以後に締結された契約であること

身元保証契約は、従業員の将来の行為によって生じる未確定の損害を保証するものであるため、契約内容によっては、この「根保証契約」に該当すると考えられています。該当する場合、2020年4月1日以降に締結された身元保証契約に極度額の定めがなければ、その身元保証契約自体が効力を生じません(民法465条の2)。

ただし、実際の契約が個人根保証契約に該当するかどうかは、契約書の文言や契約の実質的な内容によって判断が分かれる可能性があります。身元保証書に極度額が明記されているかどうかを確認し、記載がない場合は会社や専門家に確認することをおすすめします。

身元保証書に「連帯して」と書かれている場合の責任

身元保証書には「連帯して責任を負う」という文言が入っていることがあります。この文言は身元保証人が1人の場合でも記載されることがあり、「誰と連帯するのか」によって法的な意味合いが異なります。この点は身元保証ニ関スル法律自体には規定がなく、民法の一般的な保証のルールに従うと考えられます。

「本人と連帯して」責任を負う場合(民法454条)

身元保証書に「本人(従業員)と連帯して損害賠償の責任を負う」といった文言がある場合、これは民法454条の「連帯保証」にあたると考えられます。通常の保証人が持つ催告の抗弁・検索の抗弁(まず本人に請求するよう求める権利)を失い、企業は本人への請求を経ずに、直接身元保証人へ請求できるようになります。この文言の効果は、身元保証人が1人であっても2人以上であっても同じように及びます。

複数の身元保証人が「連帯して」責任を負う場合(民法456条・427条)

身元保証人が2人以上いる場合には、もう一つ別の論点があります。保証人同士の間で「連帯して」責任を負うという特約(保証連帯)があるかどうかで、それぞれの保証人が負う金額の範囲が変わります。

  • 特約がない場合:民法456条・427条により、各保証人は原則として全体の責任額を人数で均等に割った範囲でしか責任を負いません(「分別の利益」)。例えば身元保証人が2人で、損害額が100万円と判断された場合、原則としてそれぞれ50万円ずつの責任にとどまります
  • 特約がある場合:分別の利益を失い、各保証人がそれぞれ全額について責任を負う可能性があります

身元保証書の「連帯して」という文言が、本人との関係(454条)を指しているのか、保証人同士の関係(456条)を指しているのか、あるいはその両方を意味しているのかは、契約書の具体的な文言によって異なります。いずれのケースでも、安易に自己判断せず、契約書に「誰と連帯するのか」が明記されているかを確認し、不明な場合は企業の人事担当者や専門家に相談することをおすすめします。

身元保証人と保証人、保証会社との違い

身元保証人と似た概念に「保証人」「保証会社」がありますが、これらは異なるものです。

身元保証人と連帯保証人の違い

賃貸住宅の契約時に求められる「連帯保証人」と、就職時の「身元保証人」は法律上別の概念です。

  • 身元保証人:就職時に従業員の身元を保証。身元保証法が適用される。本人の行為による損害賠償責任を負う
  • 連帯保証人(家賃等の保証):賃貸借契約で、主債務者(借主)が家賃などを支払わない場合に支払う義務を負う。民法が適用される

身元保証人は本人の「行為」に関する責任であり、連帯保証人は本人の「債務」に関する責任です。責任の内容が全く異なります。前述のとおり、身元保証人であっても「連帯して」という特約があれば連帯保証人と同様に催告の抗弁・検索の抗弁を失うため、名称ではなく契約内容で判断する必要があります。

身元保証人と保証会社の違い

保証会社は、賃貸借契約において借主に代わって家賃を保証する企業です。一方、身元保証人は就職時に本人の身元を保証する個人です。保証対象、責任内容、法律の根拠が全く異なります。

身元保証人と身元引受人の違い

介護施設や老健施設に入所する際に求められる「身元引受人」と、就職時の「身元保証人」も異なります。身元引受人は、原則として本人の連絡先や緊急時の対応を担当するもので、法令上の定義がなく、一般的には金銭的な責任を負いません。これに対し、身元保証人は身元保証法により金銭的責任を負う可能性があります。

身元保証人になる際の注意点

身元保証人を引き受ける際には、以下の点に注意が必要です。

責任内容を十分に理解する

身元保証人になる前に、保証する金額、保証期間、どのような行為に対して責任を負うのかを必ず確認しましょう。契約書に「連帯して」という文言があるかどうか、極度額が定められているかどうかも重要な確認ポイントです。契約書の内容をしっかり読み、わからない点は企業や本人に確認することが重要です。

本人の経歴や背景を把握する

雇用される本人(従業員)の経歴、職歴、人柄について、事前に可能な範囲で確認しておくことが望ましいです。本人の経歴に不透明な点がないか、誠実な人物であるかを判断したうえで、身元保証人を引き受けるかどうかを決めましょう。

軽く考えずに慎重に判断する

親族の就職を応援したいという気持ちはあるかもしれませんが、身元保証人の責任は法律上重いものです。本人の行為により企業から損害賠償請求を受ける可能性があることを念頭に置いて、慎重に判断する必要があります。

身元保証人が求められない、または提出できない場合

企業によっては、身元保証人を求めないケースもあります。また、身元保証人を提出できない事情がある場合は、事前に企業に相談することが重要です。

近年では、プライバシーの観点や手続きの簡素化の観点から、身元保証人を求めない企業も増えています。採用面接の際に「身元保証人の提出は必須か」「提出できない場合の対応方法」などを確認することをお勧めします。

身元保証人と保証人代行サービスの関係

身元保証人を用意できない場合、身元保証人を紹介するサービスの利用を検討する人もいるかもしれません。ただし、身元保証人代行サービスについては、サービスの内容や法的責任がどのように扱われるかについて、サービス提供事業者の契約書や利用規約を十分に確認する必要があります。

紹介される身元保証人も、法律上は通常の身元保証人と同じ責任を負うことになるため、サービス利用者は紹介された人物がどのような契約条件で身元保証人になるのかを理解したうえで、利用の判断をすることが重要です。

身元保証人に関する相談について

身元保証人に関するトラブルや不明な点がある場合は、企業の人事部門に確認することが第一です。契約内容に不安がある場合や、すでに損害賠償請求を受けている場合は、弁護士などの法律専門家に相談することをお勧めします。

また、身元保証人を用意できない場合の就職活動の進め方や、各種サービスの利用について質問がある場合は、転職エージェントやキャリアカウンセラーに相談するのも一つの方法です。

身元保証人は、採用時の手続きの一環として見られることもありますが、法律上は金銭的責任を伴う重要な立場です。本人も身元保証人も、その責任を十分に理解したうえで、契約を進めることが大切です。

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よくある質問

Q:身元保証書に「連帯して」と書いてある場合、責任はどう変わりますか?

A:「本人と連帯して」責任を負うという文言であれば、身元保証人が1人でも2人でも、民法454条により催告の抗弁・検索の抗弁を失い、企業から直接請求されるようになります。身元保証人が2人以上いて、保証人同士が「連帯して」責任を負うという特約がある場合は、民法456条・427条の「分別の利益」を失い、各保証人が全額について責任を負う可能性があります。誰と連帯するのかによって意味が異なるため、契約書の文言を必ず確認してください。

Q:身元保証人は単なる身元確認だけの役割ですか?

A:いいえ。身元保証人は身元保証法により、従業員の行為によって企業が受けた損害を賠償する法的責任を負います。単なる身元確認にとどまりません。

Q:身元保証人の責任は無制限ですか?

A:いいえ。責任は保証期間(原則3年、期間を定める場合でも上限5年)の範囲内に限られ、裁判所が企業側の監督上の過失などを考慮して賠償額を調整します。また、2020年4月1日以降に締結された契約が個人根保証契約に該当する場合は、極度額の定めがなければ契約自体が効力を生じません(民法465条の2)。

Q:身元保証人と連帯保証人は同じですか?

A:違います。身元保証人は就職時に本人の身元と行為を保証するもの(身元保証法適用)。連帯保証人は賃貸契約時に家賃などの債務を保証するもの(民法適用)で、責任の内容が全く異なります。ただし、身元保証人であっても「連帯して」という特約があれば、通常の連帯保証人と同様に催告の抗弁・検索の抗弁を失います。

Q:身元保証人になることを断れますか?

A:はい。法的に身元保証人になることを強制されることはありません。責任の内容を理解したうえで、慎重に判断する必要があります。

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