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賃貸物件を借りるとき「保証会社を使う」場合と「保証人を立てる」場合があり、何が違うのか分かりにくいと感じる方は多いはずです。
実は民法上、保証会社も個人の連帯保証人も同じ「保証人」として扱われます。
この記事では、両者に共通する法律上のルールと、個人にだけ適用される極度額などの規定の違いを、条文に沿って整理します。
賃貸の保証会社と保証人の違いは民法にどう定められているか
賃貸借契約における「保証会社」と「保証人」は、どちらも借主が家賃を払えなくなったときに代わりに支払う義務を負う存在という点では共通しています。
民法上、保証会社(法人)も個人の連帯保証人も、同じ「保証人」というカテゴリーに含まれます(民法446条以下)。
両者の違いとして世間ではさまざまなことが言われますが、法律上大きな違いのひとつは、民法が個人を保護するために設けた一部の規定が、法人である保証会社には適用されないという点です。
それ以外の保証契約としての基本的な仕組みは、個人保証人でも保証会社でも共通しています。
このほか、借主(個人)と保証会社(法人)の保証委託契約は消費者契約法上の「消費者契約」にあたりうる点や、保証会社の保証は商行為にあたるため商法511条2項により特約がなくても当然に連帯保証となる点なども、個人保証との違いとして挙げられます。
保証会社も個人保証人も共通して受ける法律上のルール
まず、保証会社と個人保証人のどちらにも共通して適用される民法のルールを確認します。
- 保証契約は書面(または電磁的記録)によらなければ効力を生じません(民法446条2項)。これは保証会社との契約でも個人の保証契約でも同じです。
- 保証債務の範囲には、主債務(家賃)だけでなく利息・違約金・損害賠償なども含まれます(民法447条)。
- 連帯保証の場合、保証人には「まず主債務者に請求してほしい」と主張する催告の抗弁権や、「まず主債務者の財産から回収してほしい」と主張する検索の抗弁権がありません(民法454条)。
- 国土交通省が公表している賃貸住宅標準契約書も「連帯保証人型」として作られており、賃貸借の保証は連帯保証の形をとることが一般的です。
- 保証会社の保証は商行為にあたるため、特約がなくても商法511条2項により連帯保証となります。
- 主債務者(借主)への請求などによる時効の完成猶予・更新の効力は、保証人にも及びます(民法457条1項)。
- 保証人は、主債務者が主張できる抗弁を債権者に対抗することもできます(同条2項)。
つまり、保証会社を使う場合でも「法人だから民法のルールが及ばない」ということはありません。
保証契約としての基本構造は、個人保証人と保証会社で共通しているという点をまず押さえておきましょう。
個人保証人だけに適用される法律上のルール
一方で、民法には個人を保護するために設けられ、法人である保証会社には適用されない規定がいくつかあります。
極度額(民法465条の2)
個人が2020年4月1日以後に根保証契約(一定範囲の不特定の債務を保証する契約。賃貸借の家賃保証は通常これにあたります)を結ぶ場合、あらかじめ極度額(上限額)を定めなければ、その保証契約は効力を生じません(民法465条の2第1項・2項)。
書面要件については、同条3項が446条2項・3項を準用しています。
逆にいえば、極度額の定めがない個人の根保証契約は効力を生じません。
この規定は「保証人が法人でないもの」を対象と定めており、保証会社(法人)にはこの極度額の規制は及びません。
ただし、2020年3月31日以前に締結された保証契約には改正前の民法が適用されるため、契約の締結時期の確認が必要です。
情報提供義務・通知義務
このほか、次の規定も「保証人が法人である場合には適用しない」と条文に明記されており、個人保証人にのみ適用されます。
- 民法458条の3第3項:主債務者が期限の利益を喪失した場合に、債権者が保証人へ通知する義務(第3項が法人保証人を適用除外)
- 民法465条の10第3項:事業のために負担する債務を主債務とする保証を委託する際、主債務者が保証人に財産状況などの情報を提供する義務(第3項が法人保証人を適用除外)
ただし、民法465条の10は「事業のために負担する債務」の保証が対象です。
そのため、居住用の賃貸借契約の家賃保証には、この情報提供義務の規定は適用されません。
一方で、委託を受けた保証人の請求があったときに、債権者が主債務の履行状況(不履行の有無・残額など)を情報提供しなければならない民法458条の2には、法人を除外する規定がありません。
ただし、これは保証人側から請求して初めて生じる義務であり、自動的に通知される制度ではない点に注意が必要です。
つまり、個人が2020年4月以後に根保証契約を結ぶ場合には極度額という法律上の上限が必要になりますが、保証会社の保証にはそうした法定の上限額を求める規定は見当たりません。
この違いが、法律上もっとも分かりやすい相違点のひとつといえます。
保証会社を使う場合の一般的な流れ
保証会社を利用する仕組みとして、次のような流れがよく説明されます。
これは民法などの法令が一律に定めた手続きではなく、業界の実務としての一般的な流れである点にご注意ください。
1.借主が保証会社と保証委託契約を結ぶ
借主が保証会社と「保証委託契約」を結び、保証料を支払います。
これは、借主と保証会社との間の契約です。
2.保証会社が貸主との間で保証契約を結ぶ
保証会社は貸主との間で「保証契約」を結び、借主が家賃を滞納した場合などに、貸主へ立て替え払い(代位弁済)を行います。
3.保証会社が借主に求償する
保証会社が家賃を立て替えたとしても、借主の支払義務がなくなるわけではありません。
民法459条により、保証会社は立て替えた分を借主に請求する権利(求償権)を持ちます。
支払う相手が貸主から保証会社に変わるだけでなく、459条2項が準用する442条2項により、立て替えた額に加えて弁済日以後の法定利息や費用も求償の対象になります。
保証委託契約に遅延損害金の定めがある場合は、その内容も契約書で確認する必要があります。
保証委託契約と保証契約は別の契約です。
借主が保証料を支払う相手と、貸主が家賃の立て替えを請求する相手が、いずれも保証会社であるという構造になっています。
なお、家賃保証料の金額や、途中解約した場合の取り扱い、更新時の扱いについて、法令が一律の基準を定めているものは確認できませんでした。
利息制限法8条には「保証料の制限等」という規定がありますが、これは営業的金銭消費貸借(貸金業者などが行う金銭の貸し借り)を主債務とする保証が対象であり、家賃債務保証には適用されません。
保証料や解約時の扱いは、必ずご自身の契約書・重要事項説明で確認してください。
保証会社の登録・認定制度は任意である点に注意
家賃債務保証業には、貸金業法の登録制や宅地建物取引業法の免許制のような、参入を規制する業法は設けられていません。
国土交通省による「家賃債務保証業者登録制度」は任意の登録制度です。
また、2025年10月1日に施行された改正住宅セーフティネット法(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律、平成19年法律第112号)に基づく「認定家賃債務保証業者制度」も、同法72条1項が「国土交通大臣の認定を受けることができる」と定めるとおり、業者が任意に申請する制度です。
この認定制度では、認定を受けた業者について、認定住宅(改正法で創設された制度に基づき認定を受けた住宅)の賃貸借契約を締結しようとする住宅確保要配慮者からの申込みを正当な理由なく拒まないことや、保証契約締結の条件として親族など国土交通省令で定める関係者の連絡先情報の提供を求めないことが、認定基準として定められています。
ただし、これは認定を受けた業者にのみ課される認定基準であり、家賃債務保証業を行うすべての業者に一律に課された義務ではありません。
任意の登録制度(告示に基づく家賃債務保証業者登録制度)に求められる業務ルールとも別のものです。
そのため、保証会社を選ぶ際には「登録されている」「認定されている」という一点だけで判断するのではなく、保証契約の内容や保証料、更新条件、滞納時の対応などを具体的に確認することが重要です。
保証会社と個人保証人が両方必要になるケースもある
「保証会社を使えば個人の保証人は不要になる」と定めた法令上の規定は見当たりません。
契約によっては、保証会社の利用に加えて個人の連帯保証人を求められるケースもあります。
個人が求められる保証には次の2通りがあり、法律上の扱いが異なります。
貸主に対する連帯保証人になる場合
個人が貸主に対する連帯保証人になる場合、その個人の保証契約自体に極度額の定めが必要です(民法465条の2)。
保証会社が立て替えた分の求償債務を保証する場合
保証会社が家賃を立て替えた後、その保証会社が借主に対して持つ求償権について、個人が保証するケースがあります。
いわゆる「求償保証」です。
法人である保証会社が根保証人となっている契約に極度額の定めがないときは、その求償権を主債務とする個人の保証契約は効力を生じないとする規定があります(民法465条の5第1項)。
ただし、実際の契約がこの要件を満たすかどうかは契約内容によります。
保証会社と個人保証人が併存する契約になっている場合は、それぞれの契約内容と極度額の定めがどうなっているかを、契約書で確認することが重要です。
保証会社と保証人の違いを比較表で整理する
| 項目 | 法律上の違い | 一般的な傾向・業界慣行 |
|---|---|---|
| 保証契約の基本構造 | 民法446条以下が共通して適用される | ― |
| 書面性 | 個人・保証会社とも書面(電磁的記録)が必要(446条2項・3項) | ― |
| 極度額の定め | 個人が2020年4月以後に結ぶ根保証契約に必要(465条の2) | 保証会社への法定上限は確認できず |
| 情報提供・通知義務 | 458条の3・465条の10(事業債務の保証に限る)は個人保証人にのみ適用 | ― |
| 業としての規制 | 参入を規制する業法は存在しない | 任意の登録・認定制度がある |
| 保証料の金額・上限 | 法令上の一律の上限は確認できず | 契約ごとに異なるため契約書で確認 |
| 審査基準 | 資力要件を定めた条文は見当たらない | 貸主・保証会社が任意に運用 |
| 代位弁済後の扱い | 求償権により借主への請求は継続(459条等) | ― |
保証会社を利用するときに確認したいポイント
保証会社を利用する場合は、「保証会社を使うから安心」と考えるのではなく、契約内容そのものを確認することが重要です。
特に、次の点を確認しておきましょう。
- 保証料はいくらなのか
- 更新時に更新料が発生するのか
- 保証期間はいつまでなのか
- 家賃滞納時にどのような対応が行われるのか
- 代位弁済後に借主が支払う金額はいくらになるのか
- 遅延損害金の定めがあるか
- 個人の連帯保証人も必要なのか
- 個人保証人が必要な場合、その極度額はいくらなのか
- 保証会社との保証委託契約を途中で解約できるのか
- 保証会社を変更できるのか
特に、保証会社と個人保証人の両方が必要な契約では、自分がどの契約の保証人になっているのかを明確にしておくことが大切です。
よくある質問
保証会社を使えば、個人の連帯保証人は必要なくなりますか?
法令上、保証会社を使えば個人保証人が不要になると定めた規定はありません。
契約によっては保証会社と個人保証人の両方を求められることもあります。
そのため、保証会社を利用する場合でも、契約書に「連帯保証人」や「保証人」に関する記載がないか確認してください。
保証会社が家賃を立て替えたら、借主の支払義務はなくなりますか?
なくなりません。
民法459条により保証会社は借主に対して求償権を持つため、支払う相手が貸主から保証会社に変わるだけで、借主の支払義務自体は続きます。
立て替えた額に加えて法定利息等が求償の対象になることもあります。
保証会社は国の許可を受けた業者なのですか?
家賃債務保証業には参入を規制する業法がなく、国土交通省の登録制度・認定制度もいずれも任意です。
そのため、「登録されているから必ず安心」「認定されていないから危険」と単純に判断するのではなく、保証料や更新条件、滞納時の対応など、実際の契約内容を確認することが大切です。
保証料や途中解約の扱いはどこで確認すればよいですか?
保証料の金額や解約時の取り扱いについて、法令が一律に定めた基準はありません。
必ずご自身の保証委託契約書・重要事項説明の内容で確認してください。
分からない場合は、契約前に貸主・管理会社・保証会社へ確認しておくと安心です。
保証会社と連帯保証人の両方を求められたら、どちらの責任が重いですか?
一概にはいえません。
保証会社と個人の連帯保証人では、保証契約の内容や責任範囲、極度額、求償関係などが異なるためです。
特に個人の連帯保証人については、契約書に記載された極度額を確認することが重要です。
また、保証会社が立て替えた後の求償債務について個人保証が設定されている場合は、貸主に対する保証とは別の保証関係が存在する可能性があります。
契約書に複数の保証関係が記載されている場合は、それぞれの契約内容を確認しましょう。
専門家・日本総合支援協会(JTS)への相談
【PR】以下は日本総合支援協会(JTS)のサービス紹介を含みます。
保証人や保証会社との契約内容で不安な点がある場合や、個人保証人を頼まれて対応に迷っている場合は、自己判断で進める前に専門家へ相談することをおすすめします。
日本総合支援協会(JTS)は弁護士事務所ではなく、法的な代理や交渉を行う機関ではありません。
法的な判断が必要な場合は、弁護士・司法書士、または法テラスにご相談ください。
賃貸保証人がいなくてお困りの方は、日本総合支援協会(JTS)のような相談窓口を検討することもできます。
「誰に相談すればいいかわからない」という段階でも、まず状況を整理することから始めてみましょう。
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