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家族や知人に頼まれて、保証人・連帯保証人の書類にサインしてしまった後で、「本当によかったのか」「今からでもやめられないか」と不安になっていませんか。
結論から言うと、保証人は自分の意思だけで契約をやめることは法律上原則としてできません。ただし、状況によっては無効や取消しが問題になる場合もあります。
この記事では、保証人にサインしてしまった後にできることや、例外的に無効・取消しが問題になるケース、今すぐ確認しておきたいポイントを整理して解説します。
なお、この記事は賃貸借契約や金銭消費貸借の保証・連帯保証を主に想定しています。
就職時などに提出する「身元保証」は「身元保証ニ関スル法律」という別の法律が適用され、一定の場合に将来に向かって契約を解除できる仕組みがあります。
ご自身がサインしたのがどの種類の保証なのか、まずは書類の表題や内容を確認してください。
保証人にサインしてしまった後、契約を一方的にやめることはできるのか
先に結論を述べます。
保証契約に署名して契約が成立した以上、保証人側の一方的な意思表示だけで「やめる」「なかったことにする」ことは、法律上は原則としてできません。
民法540条1項は、「契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するとき」の解除の方法として、相手方への意思表示によって解除できることを定めています。
裏を返せば、契約書にも法律にも解除の根拠がなければ、そもそも解除する権利自体がないということです。
保証契約について「保証人はいつでも一方的に解除できる」という一般的な条文は存在しません。
「思ったより責任が重いと知って怖くなった」
「軽い気持ちでサインしてしまった」
「家族に頼まれたので断れなかった」
こうした後悔や不安の気持ちだけでは、契約をなかったことにする法律上の理由にはならないという点を、まず押さえておく必要があります。
ただし、契約そのものに法律上の問題がある場合は別です。
次のような事情がある場合には、保証契約の無効や取消しが問題になる可能性があります。
例外的に無効・取消しが問題になりうるケース
一方的な解除はできなくても、契約そのものが最初から無効だったり、取消しの対象になったりする場合があります。
ただし、いずれも法律上の要件があり、単に「後悔した」「よく考えずにサインした」というだけで認められるわけではありません。
錯誤(民法95条)
意思表示に重要な勘違いがあった場合、民法95条により契約を取り消すことができる場合があります。
同条1項では、次のような錯誤について規定しています。
- 意思表示に対応する意思を欠いていた場合
- 法律行為の基礎とした事情について、その認識が事実と異なっていた場合
ただし、いずれも「その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要」であることが必要です。
また、2号の「基礎とした事情の錯誤」については、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されている必要があります(民法95条2項)。
なお、2020年施行の改正民法により、錯誤の効果は「無効」ではなく「取消し」に変更されています。
さらに、錯誤が本人の重大な過失によるものであった場合には、原則として取消しが認められません(民法95条3項)。
そのため、
「契約書をよく確認しなかった」
「保証人になる意味を調べなかった」
というだけでは、錯誤による取消しが認められるとは限りません。
むしろ、本人の重大な不注意があったと判断される場合には、取消しの妨げになる可能性があります。
詐欺・強迫(民法96条)
詐欺または強迫による意思表示は、取り消すことができます(民法96条1項)。
ここで重要なのは、保証契約の当事者は、基本的に債権者と保証人だという点です。
たとえば、金銭の貸し借りであれば、
- 債権者=お金を貸した人
- 主債務者=お金を借りた人
- 保証人=主債務者の債務を保証する人
という関係になります。
保証を頼んできた主債務者(家族・知人)は、保証契約そのものの当事者ではありません。
そのため、主債務者から、
「絶対に迷惑はかけない」
「保証人になっても支払うのは自分だから大丈夫」
などと事実と異なる説明をされてサインしたケースでは、「第三者による詐欺」の問題として扱われる可能性があります。
民法96条2項では、第三者による詐欺の場合、契約の相手方がその事実を知っていた、または知ることができたときに限り、取消しが認められるとされています。
したがって、主債務者にだまされたという事実だけで、直ちに保証契約を取り消せるわけではありません。
一方で、強く迫られた、脅されたなどの「強迫」については、第三者による場合について詐欺と同様の制限規定は条文上置かれていません。
「だまされた場合」と「脅されてサインした場合」では法律上の扱いが異なるため、区別して考える必要があります。
事業のための貸金等債務を保証する場合の公正証書(民法465条の6)
事業のために負担する貸金等債務を主債務とする保証契約については、一定の場合に公正証書が必要となります。
民法465条の6第1項では、事業のために負担する貸金等債務を主債務とする保証契約について、契約締結前1か月以内に作成された公正証書で、保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、原則として効力を生じないとされています。
ただし、主債務者が法人の場合の取締役など、一定の者については例外が設けられています(民法465条の9)。
また、主債務者が行う事業に現に従事している主債務者の配偶者も一定の例外に含まれます。
ただし、配偶者であれば誰でも例外になるわけではありません。
条文上は「その事業に現に従事している」ことが要件となっています。
この規定は、あくまで「事業のための貸金等債務」の保証に関するものです。
そのため、
- 賃貸借契約の保証
- 生活費など個人的な借入れの保証
などには、原則としてこの公正証書の規定は適用されません。
「公正証書がないから保証契約は無効」と一律に判断することはできない点に注意してください。
個人根保証契約の極度額(民法465条の2第2項)
個人が根保証人になる契約については、極度額(保証する上限額)を定めなければ効力を生じません。
これは民法465条の2第2項に定められています。
さらに、極度額の定めについても、保証契約と同様に書面または電磁的記録によることが必要です(同条3項による民法446条2項・3項の準用)。
個人根保証全般にこの規制が及ぶようになったのは、2020年4月1日以後に締結された契約についてです。
ただし、それ以前の契約でも、借入金などの貸金等債務を含む根保証については、2005年4月1日施行の旧法により極度額の定めが必要とされていました。
したがって、
「2020年より前の契約だから極度額は関係ない」
とは限りません。
対象となるかどうかは、
- 根保証契約なのか
- 契約を締結した時期はいつなのか
- 保証の対象となる債務は何なのか
などを確認する必要があります。
書面によらない保証契約(民法446条2項・3項)
保証契約は、書面または電磁的記録によらなければ効力を生じません。
そのため、口約束だけで保証人になるという場合には、この規定によって保証契約の効力が問題となります。
もっとも、この記事を読んでいる方の多くは、すでに何らかの書類に署名しているかもしれません。
その場合でも、
「何の書類にサインしたのか」
が非常に重要です。
たとえば、
- 保証契約書
- 連帯保証人欄のある賃貸借契約書
- 金銭消費貸借契約書
- 連絡先の届出書
- 身元引受書
など、書類の種類によって法律上の扱いが異なる可能性があります。
まずは、サインした書類の表題と内容を確認してください。
主債務者に情報提供義務違反があった場合(民法465条の10)
事業のために負担する債務を主債務とする保証を個人に委託する場合、主債務者には保証人になろうとする者に対する情報提供義務があります。
具体的には、
- 財産・収支の状況
- 主債務以外の債務の有無
- 主債務以外の債務の額
- その履行状況
などについて説明する必要があります。
この説明義務に違反して情報を提供しなかった、または事実と異なる情報を提供したために保証人が誤認して保証契約を締結し、さらに債権者がその事実を知っていた、または知ることができた場合には、保証人が保証契約を取り消せる場合があります(民法465条の10第2項)。
ただし、この規定も**「事業のために負担する債務」の保証に限られます。**
一般的な賃貸借契約の保証などに、そのまま適用されるわけではありません。
主債務そのものに問題がある場合
保証債務は、基本的に主債務を前提として成立するものです。
そのため、主債務そのものが無効・取消しなどによって消滅すれば、保証債務にも影響します。
また、主債務者が債権者に対して主張できる抗弁がある場合には、保証人もその抗弁を債権者に対抗できることがあります(民法457条2項)。
たとえば、主契約である売買契約や役務提供契約などについて、クーリング・オフや取消し、解除などが問題になる場合には、その結果によって保証債務の扱いが変わる可能性があります。
そのため、保証契約だけを見るのではなく、何を保証した契約なのかという「主契約」の内容も確認することが重要です。
「サインしてしまった直後」に注意したいこと
安易な支払いは追認とみなされるおそれがある
保証契約の取消しを検討している場合、特に注意したいのが法定追認です。
民法121条により、取消しが認められた行為は、初めから無効であったものとして扱われます。
一方、民法125条では、取消しができる立場にある人が、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ自分に取消権があることを知った後に、債務の全部または一部を履行するなど一定の行為をした場合、異議をとどめない限り「追認をしたもの」とみなされる場合があります。
追認とみなされると、後から取消しを主張することが難しくなる可能性があります。
逆に、取消権があることを知らないまま支払った場合には、直ちに追認とみなされるとは限りません。
ただし、この判断は具体的な事情によって異なるため、取消しを検討しているのであれば、支払いをする前に専門家へ相談することが安全です。
つまり、
「取消しを主張したいと思っているけれど、とりあえず一部だけ支払っておこう」
という対応は避けたほうがよい場合があります。
今からできることチェックリスト
保証人にサインしてしまった後で不安になった場合は、まず次のことを確認しましょう。
1.契約書類の写しを確保する
契約書や保証契約書のコピーを手元に残しましょう。
特に、
- 保証人なのか連帯保証人なのか
- 根保証なのか
- 極度額はいくらなのか
- 契約締結日はいつなのか
- 保証の対象となる債務は何なのか
を確認してください。
2.契約の種類を確認する
保証契約といっても、
- 賃貸借契約の保証
- 金銭消費貸借の保証
- 事業資金の保証
- 身元保証
など、さまざまな種類があります。
どの種類の保証なのかによって、適用される法律や問題になるポイントが変わります。
3.支払いや承諾を急がない
取消しを検討している段階では、安易に一部でも支払いをすることは避けましょう。
法定追認の問題が生じる可能性があるため、支払いをする前に専門家へ相談することをおすすめします。
4.早めに弁護士などの専門家へ相談する
保証契約を無効・取消しにできるかどうかは、
- 契約書の内容
- 契約を締結した経緯
- 誰から何を説明されたのか
- どのような認識でサインしたのか
- 主債務の内容
など、個別の事情によって判断が変わります。
そのため、早い段階で契約書一式を専門家に確認してもらうことが重要です。
5.期間制限があることを意識する
民法上の取消権には期間制限があります。
原則として、取消権は追認をすることができる時から5年間行使しないと時効によって消滅し、行為の時から20年間行使しない場合にも消滅します(民法126条)。
また、債権者が事業者にあたる場合には、消費者契約法による取消しが問題になる可能性もあります。
その場合には別の期間制限が適用される場合があり、より短い期間で権利を行使する必要が生じることがあります。
「いつでも取り消せる」というわけではないため、早めに専門家へ相談することが大切です。
よくある誤解の整理
| よくある思い込み | 法律上の実際 |
|---|---|
| クーリング・オフで撤回できる | 特定商取引法のクーリング・オフは売買契約・役務提供契約などが対象で、保証契約一般に適用される制度ではありません。主契約側がクーリング・オフされた場合の影響は別途確認が必要です。 |
| だまされてサインしたなら必ず取り消せる | 主債務者にだまされた場合は「第三者による詐欺」の問題となり、債権者がその事実を知っていた、または知ることができた場合に取消しが問題になります。強迫については詐欺とは異なる扱いになります。 |
| よく読まずにサインしたから錯誤で取り消せる | 錯誤による取消しには重要性の要件があり、本人に重大な過失がある場合は原則として取消しが認められません。 |
| 公正証書がないから保証契約は無効 | 公正証書が必要となるのは、原則として「事業のための貸金等債務」の保証です。賃貸借契約の保証などに一律に適用されるものではありません。 |
| 極度額の記載がなければすべての保証が無効 | 極度額規制の対象となるのは個人根保証契約です。2020年4月1日以前の契約でも、貸金等債務を含む根保証について旧法の規制が適用される場合があります。 |
| 主債務者に頼めば保証人を外してもらえる | 保証契約の当事者は債権者と保証人です。主債務者の意向だけで保証契約を終了させることはできません。 |
専門家への相談
ここまで見てきたように、保証契約を無効・取消しにできるかどうかは、契約の種類、契約を締結した経緯、契約書の内容など、個別の事情によって判断が分かれます。
そのため、ご自身のケースがどの規定に当てはまりうるのかを正確に判断するには、契約書一式を専門家に確認してもらうことが重要です。
契約の有効性について具体的な法律判断が必要な場合や、債権者との交渉・訴訟などが必要な場合には、弁護士など法律の専門家への相談をおすすめします。
また、「誰に相談すればいいかわからない」という段階であれば、法テラスや弁護士会の法律相談、保証人に関する相談窓口などを利用して、自分の状況を整理する方法もあります。
よくある質問
サインした直後なら無条件でキャンセルできますか?
できません。
保証契約に一般的なクーリング・オフ制度はありません。
そのため、サインした直後であっても、「直後だから」という理由だけで契約を撤回することはできません。
無効・取消しが問題になるのは、錯誤・詐欺・強迫など、法律上の要件を満たす場合です。
契約書にサインした後に不安になった場合は、できるだけ早く契約内容を確認しましょう。
家族に頼まれてよく分からないままサインしてしまいました。取り消せますか?
状況によります。
家族など主債務者にだまされた場合は、「第三者による詐欺」の問題となる可能性があります。
この場合、契約の相手方である債権者がその事実を知っていた、または知ることができたときに取消しが問題になります。
単に、
「よく分からないままサインした」
「家族に頼まれたからサインした」
というだけでは、取消しが認められない可能性があります。
契約に至った経緯をできるだけ具体的に整理し、契約書と一緒に専門家へ相談することをおすすめします。
今すぐ一部だけでも支払ってしまえば、後で楽になりますか?
取消しを検討している段階での支払いは、慎重になる必要があります。
取消しができる立場の人が、債務の履行など一定の行為をすると、法律上「追認した」とみなされ、後から取消しを主張しにくくなる場合があります。
特に、取消しの可能性を検討しているのであれば、支払いをする前に弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。
主債務者に「もう保証人をやめたい」と伝えれば契約は終わりますか?
それだけでは終わりません。
保証契約の当事者は債権者と保証人です。
そのため、主債務者に「保証人をやめたい」と伝えただけで、保証契約が当然に終了するわけではありません。
保証契約の解除や変更については、契約内容を確認したうえで、債権者を含めた対応が必要になります。
まとめ
保証人にサインしてしまった後、
「やっぱり保証人をやめたい」
「こんなに責任が重いとは思わなかった」
「今から取り消せないだろうか」
と不安になることはあります。
しかし、保証契約は、サインした後に後悔したというだけで一方的に撤回できるものではありません。
一方で、
- 錯誤があった
- 詐欺によってサインした
- 強迫によってサインした
- 事業性の債務について必要な公正証書が作成されていなかった
- 個人根保証なのに必要な極度額が定められていない
- 主債務者から必要な情報が提供されていなかった
- 主債務そのものに無効・取消しなどの問題がある
などの場合には、保証契約の無効や取消しが問題になる可能性があります。
重要なのは、「サインしてしまったからもう何もできない」と決めつけないことです。
まずはサインした契約書や書類を確保し、保証の種類、契約日、極度額、保証の対象となる債務などを確認しましょう。
そして、取消しなどの可能性を考えている場合には、安易に支払いや承諾をする前に、弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。
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